本のご紹介: 『宮本常一と歩いた昭和の日本』

画像『宮本常一と歩いた昭和の日本』
あるく みる きく双書 全25巻、農文協

没後30年記念出版
平成22年9月より毎月刊行、各巻2940円、全25巻セット73500円

久しぶりに本屋に行ったら、考古・民俗・文化人類学のコーナに『宮本常一と歩いた昭和の日本』がずらっと並んでいた。ああ、もう13回目なのか。

立ち読みともいえぬ程度なのに、書評めいたことを書くのは、この偉大な民俗学者と一度だけ、一瞬のクロスオーバーをしたことを思い出したからだ。

あれは1980年、みんぱくでは特別研究「日本民族文化の源流の比較研究」を10年計画ではじめたが、その第一回のときだった。開館のあわただしさもようやく落ち着き、施設もととのったので、それまで満を持して準備していた特別研究をはじめたのである。新しい構想の博物館で総合研究をはじめるというので、若手中心だったが(委員長の佐々木高明さんでもまだ50台だった)、各学会の大物も参加し、なかに宮本さんもいたのである。

感動したのは宮本さんが若手と対等な立場で議論に加わったことだった。
たとえば、野生食の利用の討論で:
「毒性の強いシレイ(彼岸花の根)は水さらしすると食べられるそうですが…」
「ひどい味で。団子にして食べるとき、囲炉裏の縁をぐっとつかんでから口に入れ、後ろからドンと背中をたたいてもらって、飲み込むんです。」
「・・・・」

わからない事例が出ると
「うーん、それはふるさとの島に帰って古老に聞いてみなくては」
「先生、それはないでしょう」

宮本さんは旅する巨人とよばれる民俗学者で、決して頑健とはみえないのに全国をくまなくほんとに「足」でかせいだ人だ。民俗学者は(わたしはかじった程度でしかないが)、ややもすれば懐古的というか、過去に目がいってしまいちなのに、今ある現象を、明確に見定めていたところがすごい。もっといろいろ聞きたいと思ったが、翌年、亡くなってしまい、とても残念な思いがした。

(カンチョー)

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