「吹田市の自然物語」 09年7月19日(日)イベントと講演

関西大学のMさんが
「吹田市の自然物語」の講座・シンポジウムをまとめてくださいました。
今回の自然物語を順を追ってふりかえっていきます
(おーぼら)



「吹田市の自然物語」

オオムラサキの放生会
オオムラサキを放すセレモニーと懇談

オオムラサキの放蝶セレモニーが19日(日)13時、吹田市立博物館であり、18日(土)からはじまった「吹田いま・むかし」第3期「吹田市の自然物語」を印象づけた。
飼育にあたった塩田敏治さんは二人の孫とともに蝶を放した。これに市長、館長らも参加した。
周りを囲んだ人は、オオムラサキの鮮やかなむらさき色と裏側の枯れた草色やほかのチョウと見比べた。この後、集まった30人ほどが館長と塩田さんを囲み、オオムラサキの飼育や蝶について懇談した。吹田ではモンシロチョウを見かけないがアオスジアゲハを見るようになり、クスノキとの関係があると話題になった。またスミレの花を食べる蝶の話しがでた。出席していた平軍二さんからこのような状況について、「都市の生き物―想像を超えるしたたかさー」とのテーマで吉田宗弘先生から8月15日(土)に講演をいただく予定で、蝶に詳しい先生ですのでぜひお尋ね下さいと案内した。


大木への高い関心  40人強が参加した関大キャンパス大木観察会
この日9時から平さんは「関大キャンパス大木観察会」を行った。40人強が集まった。幼い男の子をつれ、ベビーカーで参加されたお母さんがおられた。観察会は幼稚園の上部からはじめた。エスカレーターや会館の設置で伐採され、整地された関大会館周辺→経商学舎前のクスノキ→円神館のヒマラヤスギ→先端技術センター前のクスノキ、イチョウと周り、大木の幹周りを参加者が測り、観察した。ベビーカーの子どもがむずかり、凜風館通りのメタセコイヤから簡文館前広場―旧里山コースをあきらめた。幹周りを測った小学生とお母さんは樹木を仰ぎ見ていた。参加者は大木を実感する一方で、頂上部や枝を伐採している樹に目が向いた。また経商学舎前のクスノキに目立つ2コのサルノコシカケに目が向かい、年を刻む樹木の先行きに関心をもった。岩崎記念館前に移植したクスノキの近くにサクラの木が植えられているのに驚いていた。
旧里山で草に跳ねているバッタを小学生の女の子が見つけ、捕らえていた。また葉や幹のアブラゼミ、クマゼミの抜け殻を見つけ、手にしていた。
平さんは観察会のまとめを凜風館の屋上庭園で行う予定で階段を登った。ところが扉で閉じられていた。私はこの措置を知らずにいたため、午前中とはいえ夏の日差しのなか、歩かれた参加者に迷惑をかけた。ところで、樹木への関心が年配者だけでなく40歳代の方も高いのを知った。このような集いが、雨水を活かした水が木々の間を流れ、木陰のある中庭で樹木への思いを語っていただくといろいろな想い出と重ねて話されるだろうと想像した。
キャンパスに100年を超えた大木はあるかとの参加者の質問に対して、1922(大正11)年に千里山に移転した以降、とりわけ昭和初期に整備されていくなかの樹木が主であり、100年を超える歴史を刻んだ樹木はないと考えるのが適切であると私は答えた。
平さんから、吹田では燃えた岸部神社本殿の奥にあった樹木が100年、200年を刻んでいるようだが垂水神社など吹田の多くの神社は“鎮守の森”という信仰の対象より里山として木々が暮らしに利用されてきており、古木は多くないと解説された。
関大生(女子)が一人参加していた。木に関心があり、キャンパス全体の木々の様子や名前などを知り、このように見て歩くのは初めてであり、よかったと感想を述べた。

感銘を与えた年輪年代法を確立された光谷拓実さんの
講演
「自然が書いたカレンダー~年輪からわかること~」の作成に挑む

14時から光谷拓実総合地球環境学研究所客員教授の「自然が書いたカレンダー~年輪からわかること~」の講演が行われた。
光谷さんは、奈良県文化財研究所で遺跡から出土した木片に刻まれている年輪から時代を割り出し、歴史学への応用を求められた科学的な年輪年代学への取り組みと技法の形成とその応用について、100人ほどに語られた。
年輪年代学を含めた自然科学的年代測定法の種類と対象資料、測定範囲から説明をはじめた。年代測定法が20世紀の初頭アメリカアリゾナ大学天文学者ダクラス博士により確立された歴史的な経過と考古学、建築史、美術史、自然災害史などに応用され、世界に拡がっている。日本では光谷さんの研究が1985年に実用化された。東アジアでは、韓国、中国やタイで自国に適した樹木を選び出し、研究が行われていると説明した。
次に、光谷さんが信頼に足りうる木材年代測定の確立に向け、顕微鏡でみたスギの木口面(横断面)の図を示し、気象条件に変化による年輪幅の違い、地域での同調性と樹種の選択などを詳細に説明した。その結果、各年代で建造物に使用されるヒノキ、スギ、コウヤマキ、ヒノキアスナロの4種を適用樹種と定めている。
実際に応用するには、基準になる過去の年輪の変動変化を10ミクロン単位で調べ、これを基準とする技法であると解説した。伐採された樹木の最も外側に形成された年輪から中へ数えていく。原則として年輪の1つ1つが何年に形成されたものかがわかる。ところが、一部が途切れている不連続年輪や1年論のなかに年輪境界を示す晩材様の木材組織が2層、3層とある場合がある。この偽年輪で誤りが生じないように観察していく。10ミクロン単位で計測する年輪読み取り器でもって年輪幅の計測値データー(年輪データー)を得る。こうして得た年輪の変動パターンの次に、一定の地域の中で同時代に生育した20点前後の円盤標本から収集した年輪データーから標準年輪幅変動パターンを作る。それらを示し、見方を説明した。現生の天然ヒノキの樹齢は200~300年前後のものが多く、これより古い時代の標準パターンの作成が光谷さんの課題であり、これに取り組まれた事例を続いて語った。

自然が作り出す歴史年表
―暦年標準パターンの作成

古い建物の修理部材などを計測し、照合して標準パターンを作り上げていく。古い建築の部材から遺跡の出土材へ、さらに古い遺跡の出土材へと連鎖し、標準パターンを遡上させていき、年代を割り出す暦年標準年輪幅変動パターンを作り上げる。この連結作業でボタンの掛け違いを起こさないよう細心の注意が払って取り扱うのが大切であると自戒されるように語った。この暦年標準パターンは自然が作りだした歴史年表そのものであると述べた。
ヒノキ、コウヤマキ、スギ、屋久スギ、ヒバの暦年標準パターンの作成を図で示し、各々を説明した。なお、この対象空白地域は北海道、宮崎県、鹿児島県、沖縄県としている。
非破壊での年代測定技術として、デジタルカメラの方法、マイクロフォーカスX線CT装置、ソフトX線をあげ、年輪年代学が進展していると説明した。
歴史の見直しを迫る
年輪年代を明らかにした応用事例をあげた。吹田市榎坂遺跡から出土した井戸枠材では892年+αと640年+αと判定した。この年代のズレが起こっている問題から材を転用したとも推測でき、発掘現場担当者の見解を大切にしたいとした。続いて、古代都城(紫香楽宮)の所在地を確定する端緒になった滋賀県宮町遺跡、弥生時代や古墳時代の年代を見直す契機となった大阪府池上曽根遺跡、歴史学研究者に衝撃を与えた法隆寺の建築年代を明らかにした事例を次々とあげて説明し、地域の歴史をひもとく重要な手がかりであると年輪年代法の役割を示した。

光谷さんから直に語られた日本で木材年輪年代法を確立した経緯と応用事例の説明に感銘を与えていた。また邪馬台国に関心のある人は刺激を受けていた。
「年輪は方位を表していない。樹木の生えている斜面などに注意が必要」との説明に驚きの声があがった。
(2009年7月21日 作成M)

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